2018年10月15日

図鑑.jp

図鑑.jpとは電子書籍化された国内の図鑑を閲覧できるサービスです。
以下引用です。

引用ここから---------------------------
「日本の生き物を調べる・わかる 図鑑.jp」は、電子書籍化した図鑑類が読み放題になる会員制サービスです。各出版社が発行している日本を代表する専門図鑑を中心に、すでに絶版となった図鑑や公共機関などが発行した一般には入手が困難な図鑑も提供します。
複数の図鑑を横断検索できるだけでなく、ユーザが投稿写真を加えることで図鑑が補完され、図鑑とユーザ投稿を合わせて「究極の図鑑」を目指すサービスです。
引用ここまで---------------------------

図鑑.jpの中には各分野の識者によるコラムのページがあり、菌類では中島淳志氏によるきのこ分類の最新情報の記事があったりします。で、本日、各分類群の各論をとりあげたコラムが新たに追加されました。執筆は私です。2013年に記載したホテイイロガワリ、ニオイバライロイグチ、モウセンアシベニイグチについて解説しました。

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きのこ分類最前線
【新種の発見と記載】長野県で発見した3種のイグチ 〜ホテイイロガワリ、ニオイバライロイグチ、モウセンアシベニイグチ
https://i-zukan.jp/columns/152
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興味のある方はぜひ会員登録をして「図鑑.jp」を有効活用してみてはいかがでしょうか。

posted by gyuken at 20:50| Comment(0) | 日記

2018年08月01日

幻のイグチ

日本産で既知のイグチ類はおよそ160種が報告されていますが、中には新種記載されて以降ほとんど見つかっていない希少なものがいくつかあります。アカネアミアシイグチ Boletus kermesinus Har. Takah., Taneyama and Koyama は、過去において富士山で行われた菌学会観察会で「Boletus frostii」と同定されて以来「幻のイグチ」とされていたことがあります。最近は熱心なきのこ愛好家が頻繁にアカネアミアシイグチを発見しSNSに投稿する例が増えています。

以下に挙げるのは私にとって「幻のイグチ」であるものです。

ヌメリイロガワリ Boletus viscidipellis Har. Takah., Degawa & Taneyama
私自身は新種記載時に乾燥標本を検討したのみで生の実物を見たことがありません。昨年、菌類懇話会入生田例会で、おそらくそうであろう標本を採集しましたが、まだ詳細の検討をしていません。

オクヤマニガイグチ
 Tylopilus rigens Hongo
京都、福井産標本に基づいて記載された種ですが、東日本で見かけるよく似た種は、オクヤマニガイグチではないと疑っています。私自身、過去に何回か西日本の観察会に参加しましたが、オクヤマニガイグチが採集された記憶がないです。確実な標本を見たことがないので「幻のイグチ」なのです。画像検索などすると沢山の画像がヒットしますが、確実に同定されたものは皆無でしょう。

ヨゴレキアミアシイグチ Boletus sinapicolor var. japonicus Hongo
子実体の外見は、いわゆる「キアシヤマドリタケ(池田仮称)」に酷似しており、キアシヤマドリタケをヨゴレキアミアシイグチと誤同定した例を見たことがあります。ヨゴレキアミアシイグチとキアシヤマドリタケで決定的に異なっているのは次の2点です。
1)幼時孔口が菌糸で塞がれるstuffed poreであるか。
   ヨゴレキアミアシイグチはstuffed poreでない。
   キアシヤマドリタケはstuffed poreである。
2)かさ表皮を構成する菌糸の形質。
   ヨゴレキアミアシイグチは類球形細胞が連なるmoniliform。
   キアシヤマドリタケは毛状被trichoderm
やはり確実な標本を見たことも聞いたこともないので「幻のイグチ」です。
ちなみにマレーシア産Boletus sinapicolor Corner は、2011年にPulveroboletus sinapicolor (Corner) E. Horakとされましたが、ヨゴレキアミアシイグチも同様にPulveroboletusとされることになるでしょう。

アカアミアシイグチ Boletus pseudoluridus Hongo
滋賀県標本に基づいて記載された種です。ホテイイロガワリ Boletus ventricosus Taneyama and Har. Takah.によく似ていますが、柄の表面、柄シスチジアの形質が異なっています。SNSで大阪産のホテイイロガワリによく似た写真を見かけますが、ひょっとするとそれがアカアミアシイグチである可能性があります。
posted by gyuken at 08:18| Comment(0) | 日記

2018年05月22日

菌根生のきのこには宿主特異性はあまりない

先週末は菌類懇話会の総会で東京大学奈良一秀先生の講演がありました。菌根を調べて系統地理や集団遺伝などを研究されているということで大変興味深いお話がありました。

イグチのような菌根生のきのこを調べていると「共生している樹木はどれなのか」が常に気になるところで、個人的な経験則から判断すると、「宿主となる樹種が異なっていれば別のTaxonであろう」とすることが多いのではないでしょうか。ところが実はそうとは限らないことを示すお話がありました。

菌根生のきのこは実は「何でも屋さん」で、宿主特異性はあまりないとのことでした。以前、タマゴタケの菌根合成を行ったE先生から聞いた話では、実験の際用いる宿主植物はアカマツなのだそうです。タマゴタケとアカマツは全然縁が無いというイメージをもっていましたが、実際に接種試験を行うとタマゴタケはアカマツに菌根を作るということでした。

「何でも屋さん」である菌根生のきのこは、その発生環境において自身に合った共生相手を選んで菌根を作るのだそうです。例えば、発生環境が低地であればそこで優占しているシイやカシなどと、標高が上がればモミ属などの針葉樹と共生するということです。

この話をきいて一つ確実な具体例が思い当たりました。オオウラベニイロガワリです。これまでの調査ではオオウラベニイロガワリには、シイ、カシ樹下で見つかるものとウラジロモミ、ドイツトウヒ、アカマツ樹下で見つかるものがあり、2系統のTaxonが存在していると考えていました。

ところが両者の形態を比較してみると明瞭に区別できる点が全くありませんでした。ここでいう形態とは、顕微鏡的な数値を統計的に処理したデータのことです。さらに、塩基配列を取得し系統解析を行ったところ、両者は単一のクレードを形成しました。形態と分子、あらゆる情報をもって比較した結果、両者で異なっているのは共生相手の樹種のみという結論となったのです。

「宿主植物が異なるから別のTaxonである」と安易に考えない方がよいのだということですね。


ウラジロモミ樹下に発生したオオウラベニイロガワリ、標高1500m
ウラジロモミ樹下に発生したオオウラベニイロガワリ、標高1500m

低地の常緑広葉樹に発生したオオウラベニイロガワリ, 標高21m
低地の常緑広葉樹に発生したオオウラベニイロガワリ, 標高21m
posted by gyuken at 08:35| Comment(0) | 日記