2018年05月22日

菌根生のきのこには宿主特異性はあまりない

先週末は菌類懇話会の総会で東京大学奈良一秀先生の講演がありました。菌根を調べて系統地理や集団遺伝などを研究されているということで大変興味深いお話がありました。

イグチのような菌根生のきのこを調べていると「共生している樹木はどれなのか」が常に気になるところで、個人的な経験則から判断すると、「宿主となる樹種が異なっていれば別のTaxonであろう」とすることが多いのではないでしょうか。ところが実はそうとは限らないことを示すお話がありました。

菌根生のきのこは実は「何でも屋さん」で、宿主特異性はあまりないとのことでした。以前、タマゴタケの菌根合成を行ったE先生から聞いた話では、実験の際用いる宿主植物はアカマツなのだそうです。タマゴタケとアカマツは全然縁が無いというイメージをもっていましたが、実際に接種試験を行うとタマゴタケはアカマツに菌根を作るということでした。

「何でも屋さん」である菌根生のきのこは、その発生環境において自身に合った共生相手を選んで菌根を作るのだそうです。例えば、発生環境が低地であればそこで優占しているシイやカシなどと、標高が上がればモミ属などの針葉樹と共生するということです。

この話をきいて一つ確実な具体例が思い当たりました。オオウラベニイロガワリです。これまでの調査ではオオウラベニイロガワリには、シイ、カシ樹下で見つかるものとウラジロモミ、ドイツトウヒ、アカマツ樹下で見つかるものがあり、2系統のTaxonが存在していると考えていました。

ところが両者の形態を比較してみると明瞭に区別できる点が全くありませんでした。ここでいう形態とは、顕微鏡的な数値を統計的に処理したデータのことです。さらに、塩基配列を取得し系統解析を行ったところ、両者は単一のクレードを形成しました。形態と分子、あらゆる情報をもって比較した結果、両者で異なっているのは共生相手の樹種のみという結論となったのです。

「宿主植物が異なるから別のTaxonである」と安易に考えない方がよいのだということですね。


ウラジロモミ樹下に発生したオオウラベニイロガワリ、標高1500m
ウラジロモミ樹下に発生したオオウラベニイロガワリ、標高1500m

低地の常緑広葉樹に発生したオオウラベニイロガワリ, 標高21m
低地の常緑広葉樹に発生したオオウラベニイロガワリ, 標高21m
posted by gyuken at 08:35| Comment(0) | 日記
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