2018年08月01日

幻のイグチ

日本産で既知のイグチ類はおよそ160種が報告されていますが、中には新種記載されて以降ほとんど見つかっていない希少なものがいくつかあります。アカネアミアシイグチ Boletus kermesinus Har. Takah., Taneyama and Koyama は、過去において富士山で行われた菌学会観察会で「Boletus frostii」と同定されて以来「幻のイグチ」とされていたことがあります。最近は熱心なきのこ愛好家が頻繁にアカネアミアシイグチを発見しSNSに投稿する例が増えています。

以下に挙げるのは私にとって「幻のイグチ」であるものです。

ヌメリイロガワリ Boletus viscidipellis Har. Takah., Degawa & Taneyama
私自身は新種記載時に乾燥標本を検討したのみで生の実物を見たことがありません。昨年、菌類懇話会入生田例会で、おそらくそうであろう標本を採集しましたが、まだ詳細の検討をしていません。

オクヤマニガイグチ
 Tylopilus rigens Hongo
京都、福井産標本に基づいて記載された種ですが、東日本で見かけるよく似た種は、オクヤマニガイグチではないと疑っています。私自身、過去に何回か西日本の観察会に参加しましたが、オクヤマニガイグチが採集された記憶がないです。確実な標本を見たことがないので「幻のイグチ」なのです。画像検索などすると沢山の画像がヒットしますが、確実に同定されたものは皆無でしょう。

ヨゴレキアミアシイグチ Boletus sinapicolor var. japonicus Hongo
子実体の外見は、いわゆる「キアシヤマドリタケ(池田仮称)」に酷似しており、キアシヤマドリタケをヨゴレキアミアシイグチと誤同定した例を見たことがあります。ヨゴレキアミアシイグチとキアシヤマドリタケで決定的に異なっているのは次の2点です。
1)幼時孔口が菌糸で塞がれるstuffed poreであるか。
   ヨゴレキアミアシイグチはstuffed poreでない。
   キアシヤマドリタケはstuffed poreである。
2)かさ表皮を構成する菌糸の形質。
   ヨゴレキアミアシイグチは類球形細胞が連なるmoniliform。
   キアシヤマドリタケは毛状被trichoderm
やはり確実な標本を見たことも聞いたこともないので「幻のイグチ」です。
ちなみにマレーシア産Boletus sinapicolor Corner は、2011年にPulveroboletus sinapicolor (Corner) E. Horakとされましたが、ヨゴレキアミアシイグチも同様にPulveroboletusとされることになるでしょう。

アカアミアシイグチ Boletus pseudoluridus Hongo
滋賀県標本に基づいて記載された種です。ホテイイロガワリ Boletus ventricosus Taneyama and Har. Takah.によく似ていますが、柄の表面、柄シスチジアの形質が異なっています。SNSで大阪産のホテイイロガワリによく似た写真を見かけますが、ひょっとするとそれがアカアミアシイグチである可能性があります。
posted by gyuken at 08:18| Comment(0) | 日記
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